合い言葉は「Happy!!! Holy!!!」
赤い男が歩いてきた
ホーリーに参加するぞ!と宿を出たら、いきなり顔面真っ赤っかの男が歩いてきた。それを覗き込む男も顔面に色の粉をたくさんくらっていた。
作戦を練る子どもたち
真っ赤っかの男とは逆の方向に歩いていくと、ひそひそ話をする子どもたちがいた。「こうやってたくさん色の粉をかけようよ」。しかしながら、喰らわせるより喰らっている量の方が多そうな子どもたちなのだった。
色粉をかけあう子どもたちと
さらに角を曲がると色の粉をかけあう子どもたちがいた。元仲間同士だったのか「おい、やめろ!」というような逃げ方の子ども。ふふふ、と観察していたのも束の間。シャッターを押そうとしていた私の背中に冷たい衝撃が走った。色の粉を混ぜた水鉄砲攻撃を背後から受けたのだった。
騒がしいなぁ、モゥ
ホーリーの日は、ふだんから騒々しいインド人がさらに騒々しくなる日。日頃はシヴァの神様の乗り物として神聖視されている牛にも色粉や色水が噴射される。ナンダヨウ、モウ!とゆるやかに牛は色粉をよける。
次の戦いの場へ
色水、色粉の戦いはそこかしこで勃発する。ずーっとかけあっている印象があったが、実際はあっちでかけあって散歩し、こっちでかけあって散歩し、そっちにかけあいに行くという具合だ。
獲物にならないように獲物を探す
あっちの輪に参加すべきか、こっちの輪に参加すべきか、ホーリーの渦の中にいると悩ましい。様子を伺って機を見て輪に飛び込む人はとても多い。
おい、あっちが騒がしいぞ!
突然、向こうで歓声がわき起こった。どうやら大掛かりな色粉のかけあいがはじまったらしい。毎年のことなのにインド人は興味津々で騒ぎに惹き付けられてゆく。
苦難のおつかい
食器を運んでいるだけなのに、道行く人たちから「ハッピー、ホーリー!」と色水をかけられる。やれやれ、僕の顔は真っ赤になってしまったよとぼやきながら家路を急ぐ。
全身真っ赤になるまで戦う
どこもかしこも真っ赤に染まった男。彼は朝からずっと参加しているという。「年に一度のお祭りだからね」という言葉に、日本の祭りをふと思い出した。
ちょっと粉を分けてくれ!
色水や色粉は、喜捨(バクシーシ)の対象。誰彼構わず「ちょっと分けて」と言っている。ただし、もらう代わりにどっさりかけられることも。もちろん、もらったものをかけ返してもよいのだが。
上空には危険がいっぱい
町の中を歩いてすぐに気付くことは、上空からも粉や水が降ってくることだ。かけられた方を見上げると、ベランダから身を乗り出している男たち。このような場所から攻撃してくる男たちがたくさん存在しているのだ。
上空に待機する攻撃陣たち
観察してみると、どの建物にもいるわいるわ、色水を構えた男の群れ。どの道を歩いても、上から色水が降ってくることは確実である。もう、こうなったら開き直ってたくさんかけられよう。
ベランダも安全圏ではない
宿でいったん休憩していると、突然、目の前を色水のカタマリが通り過ぎて行った。とはいえ、ここは5F。何事かと窓から外を覗くと、屋上同士でかけあいをしていた。どこにいても安全ではないのだ。
おれたちも真っ赤だ
宿のスタッフもホーリーに参加していた。もう、昼下がりにはホストもゲストもおかまいなし。今日は年に一度のホーリーなのだから、みんなで楽しもう!
昼下がり、祭りが小康状態に
15時頃だろうか、祭りがだんだん落ち着いてきた。みんな家に帰ってホーリーを祝うのだろうか。宿の上からサダルストリートを見ると、人もまばらになっていた。
向かいの宿の白人たち
ホテル・パヤールの向かいの宿は、白人が多く泊まるちょっと高めのホテル。でも、そこの宿泊者たちも色水にまみれていた。祭りに人種なんて関係ない。
祭りでカラッポになる
ホテル・パヤールの従業員、パプーは宿のスタッフとして日本人とともに「今」を楽しんでいた。でも、実は故郷を思い出して隠れて泣いていたこともある。ホーリーは、そんな彼のもやもやを発散する良い機会なのかもしれない。お互いに色まみれになって遭遇したとき、彼の表情は空っぽになっていた。
さぁ、あとは家でパーティーだ
さんざん楽しんだデリーっ子たちの体は極彩色に染まっていた。「今日は楽しかったな」なんて話しながら、友人たちとおしゃべりしながら、笑いながら帰宅する。
笑顔で歩いていく人がいた
あたかも精一杯戦い終えたぞ、今年も!という笑顔で歩いてくるインド人がいた。足取りも軽やかに繁華街から郊外の方へ歩いていった。それにしてもインド人の半ズボンは珍しい。
膨れっ面で歩く人もいる
そこからちょっと駅の方へ歩くと、今度は膨れっ面で歩いてくるインド人がいた。見ると、胸にベッタリと真っ赤な色の粉。きっと集中砲火を浴びたのだろう。祭りの悲喜こもごもはインドにも存在するのだ。
今日の僕たちを撮ってちょうだい
ホーリーは年に一度のお祭り。日頃から「僕を撮って」というインド人は多いけれども、今日は特別ににこやかだ。子どもたちもカメラの前に集まってきた。
今度は一家揃って記念撮影
子どもたちを撮影して数歩も歩くことなく「せっかくだから撮ってよ」とインド人一家に呼び止められた。お爺さんもお父さんも娘さんも、こりゃ相当に楽しんだな。
服だけ着替えても
色とりどりの服が通りを往復している中、真新しいシャツとズボンを身に着けたおじさんと出会った。しかしながら、顔面も胸元も真っ赤っかなのだった。
神様に近づく行為だろうか
路上から子どもを見上げてみた。逆光の中、浮かび上がった真っ赤な女の子の顔をどこかで見た記憶がある。そう、インドの神様の陰影なのだ。
頭上炎上中
おそらくサイドの髪の毛も真っ赤に染まっているのだろうが、やはり皮膚に直接付いた色粉は目立つ。いや、絶対に色粉隊はおじさんの頭頂部を集中攻撃したに違いない。
色粉は販売されている
路上をうろうろしていると、かなりの数の屋台が色粉を売っていた。基本となる赤や紫、緑の粉に加えて小さな容器には銀ラメのペーストなどが入っていたりする。
終了の雰囲気が食べ物の屋台を呼ぶ
なんとなく、終了に近づいている雰囲気を察して、食べ物の屋台が姿を現した。ついさっきまで色粉をかけあっていたのに、その姿のまま商売するとは商魂逞しい。
いやぁ、おなか減ったね!
小腹も減ったし、とりあえず出てきた屋台で食べ物を買おう。普段どおりのサダルストリートに、ゆっくりゆっくりと戻ってゆく。デリーはこの後、夕闇へと傾いていった。
疲れたぁ、でも楽しかった。
さきほど笑顔で歩いていった半パンの男が戻ってきた。「いやぁ、疲れたよ。でも、楽しかった」と、またニコニコ。手前の男は対照的に疲労困憊。
激戦を物語る祭りの勲章
水も色粉もたくさん路上に残されていた。1年に一度だけの爆発していい祭りの残り香。毎年毎年、現れては消え、また現れては消えてゆく、真っ赤な思い出の残像。
じゃぁまたね!
明日からまた普通のサダルストリートに戻る。旅人と一期一会で出会うデリーの少年たちは、ホーリーを重ねて大人になってゆく。「ハッピー、ホーリー!」は互いの幸せを思いやる別れの挨拶でもあった。
大切な時は静寂とともに
もうすぐ家々に灯りがともる。それぞれの灯りにはそれぞれの一家がいて、それぞれのホーリーを祝う。日本の正月とはかけ離れた昼間と、日本の古き良き正月と似た祭りの後の夕暮れ。1年で最も静かなサダルストリートの夕方。
犬もインドを物語る
翌日、昼寝する一匹の犬と出会った。額には紫色のホーリーの名残。また、来年。