長寿とアプリコットの桃源郷、フンザ。
桃源郷の朝
フンザの春の朝は、空気が引き締まっていた。フンザ川も山々も、咲き乱れるアプリコットの花々も、これから始まる今日を出迎える。
さぁ、散歩に出掛けよう
濃紺の空を雲が駆け抜ける。山々に雲がぶつかり、砕けてゆく。締まった空気の中、散歩に出掛けてみた。まだ葉も付けない木々が出迎えてくれる。
山々と王宮とアプリコット
遠景から近景まで、どれをとっても素晴らしい。白い山々は天空に向かってそびえ立ち、王宮は歴史を伝え、アプリコットは季節を伝えている。
アプリコットとアーモンド
3月下旬のフンザでは、アプリコットとアーモンドの花が咲き乱れている。アプリコットはまるで桜の花のようで、お花見をしても違和感がない。
山々に囲まれたフンザ川の渓谷
王宮へ向かって歩いていた。いままで歩いてきた方角を振り返ると、フンザ川と山々に囲まれた渓谷をいつでも見ることができた。フンザ川はギルギットの南でインダス川と合流し、やがてはインド洋を目指して流れてゆく。
畑に朝陽が差し込む
春は種まきの季節。これから夏にかけてフル稼働する畑に朝陽が差し込んでいた。のんびりとした空気が眼下に横たわる。
レディー・フィンガー
見上げると変わった形の山頂が見えた。フンザ周辺で、この頂は「レディー・フィンガー」と呼ばれている。女神様の指先が見えるのだ。
太陽の光に溢れるフンザの村
レディー・フィンガーの麓に広がるフンザの村は、なだらかな傾斜を利用して家が建てられている。勾配は多いが、太陽がよく差し込む明るい空間。
太古からのメッセージ
車をチャーターして、遠出してみることにした。しばらく進んだ休憩地で、動物の落書きを発見した。鹿のような動物が描かれていた。
ミッキーマウスの体調は
車にステッカーが貼られていた。ミッキーマウス君なのだが、目が赤い。そういえば、運転手の目も充血していた。
流れゆくフンザ川に思いを
とうとうと流れるフンザ川。天空を貫く高い山々に降った雪が、春先以降に一気に溶けて川の流れとなり、インド洋へと向かうのだ。
フンザのナンバープレート
チャーターした車は緑色のジープ。ナンバープレートは隣の大きな町、ギルギットのものだった。ピカリと光る楕円形のナンバープレートが特徴的!
道を切り拓く者は、のんびりと
道の舗装が突然、途絶えた。しばらく行くと、雪で道が崩れたらしく、作業員が道を作っていたのだが、とてものんびりと作業していたのだった。
雪の壁が現れた
10人程度の作業員が、大量の雪を取り除き、道路を確保していた。彼らのがんばりが、貴重な物資や食糧を奥の村まで届けるための原動力だったのだ。
そう、ここは太古の昔、海だった
ヒマラヤ山脈は、太古の昔、海だったという。崖には砂や石の地層が多く見られ、岩ばかりのところにも、白い筋がたくさん走っていた。
氷河は過去からのメッセージ
しばらく進むと、黒く光る物体が見えてきた。氷河である。波打つように年間数センチずつ進んでいるという氷河は、風に削られ、雨に打たれ、生命を支えているのだ。
地球の原風景
人間は地球に断りもなくさまざまな施設を地球上に造り続けてきた。もし、それらがなかったらどんな風景なんだろう?という疑問に答えてくれる山々が鎮座していた。
黒く輝く氷の塊
私たちが、日々を暮らす中、この黒い氷河は年に数センチという単位で下流に向かう。黒く輝く地球上の生命に必要な水という循環に胸を打たれた。
少年は高原に佇む
乾いた大地を歩いてゆくと、少年がしゃがみ込んでいた。喜ぶでもなく、悲しむでもなく。彼の瞳に写るインダスの光景は、いつもの日常なのである。
氷河が生み出す渓谷
氷河の中をトレッキングすると出くわすのが、クレバスという名の地球の鼓動。氷河が少しずつ動いていくなかで裂け目ができるという。ただの氷の塊に見えるが、おれも生きているぞと静かにささやいているのだ。
乾いた山中に現れた紺碧の湖
エメラルドグリーンや蒼色に輝く湖がヒマラヤ山中には存在する。突然現れる生命の源に、はたと自分も地球の一員の生命なのだと気付かされる。
急な来客がもたらす緊張
記念写真をねだる子どもたちだが、いざカメラを構えると、しっかり者のお姉さんだけが笑顔の余裕。カチコチになりながら憧れのカメラのシャッターが落ちる。
フンザ川に春の息吹が訪れる
雨期と乾期が入れ替わるように訪れるフンザ川。もちろんこの中洲も河川敷も、3月下旬ならではの水量から生み出される。大水に橋が流されると、架け替えられる。
雪溶け水と暮らす
川のほとりには人が集っていた。流れの緩やかな場所で洗濯をするためだ。水源はあの氷河か、あの雪山か、考え出すとキリがない。そんな私を尻目にフンザの奥様たちの午後は過ぎてゆくのだ。
洗濯物とインダスの共有空間
フンザ川の恵みが洗濯を可能にする。洗濯をしたいときにフンザ川がある。誰もがその恵みを理解している日常が今日も営まれている。
乾燥した土地に咲く可憐な紅花
自然環境が厳しいほど、植物はがんばって実りを目指す。水が少ない、空気が薄い、それらの環境をものともせず、美しい紅色の花が旅人を迎えてくれるのだった。
ようこそインダスへ
フンザやフンザ川沿いの地元の人がどんな家に住んでいるかといえば、作りやすいコンクリート仕立ての家屋である。WELCOMEと万人に発している家を見て、旅人はなんだかホッとする。
流儀とは確かな日常の延長線
「お茶でも飲んで行かないか?」と誘われた。大きな部屋の真ん中にストーブがあり、その上にヤカンを置いて沸騰させ、お茶を入れる。その土地の流儀で入れるお茶ほどうまいものはない。
自然のベンチを使って
日が高くなってくると、3月下旬のフンザはぽかぽか陽気。農作業はもちろん、編み物やおしゃべりも、畑のふちに座って行う。大自然のベンチに時が流れゆく。
ギルギットの子どもたちも
近隣では一番大きな町、ギルギットへ行ってみた。お上りさん気分の中、「写真撮って〜」と子どもたちが駆け寄ってくる。そうだった、僕は外国人だった。
岩山と緑と山の民
地域で一番大きな町とはいえ、ゆるやかな空気が流れるギルギット。山の民たちの日常が、今日も明日も営まれゆく。
ギルギットの町の中心で
のんびりとしたギルギットの町の中心では、他の町と同じく、ロータリーがあり、そこには銅像があり、果物屋の屋台があり、人が歩いていた。当たり前のことだが、包み込んでいる空気がギルギット産なのだ。
この村に必要な水の量
フンザからギルギットの間の幹線道路沿いには、大切な水を流す用水路が延々と続く。植物を育て、やがては人々の空腹を満たす源流なのだ。
村の中の情報最先端
商店があると、人が集まる。特に昼から夕方にかけて、食材を買いにくる女性たちが村の中心地に集まってくる。おしゃべりに花が咲く、ギルギットとフンザの春。
絶品の味をお気軽に
ここでしかお目にかかったことがないのだが、変わった食べ物を発見した。パイ生地のようなパンの中に野菜煮込みが入っているのだ。とてもおいしい焼きたてパイ。
フンザの散歩道の滝
雪を被った山々に抱かれた万年雪と氷河から恵みの水がやってくる。したたり落ちる水の粒は、虹を描き、大気中へと吸い込まれていった。
フンザでの会話は心の響き合い
フンザの町を散歩していると、気軽に人々が話しかけてくる。言葉が通じないことが分かっていてもおかまいなし。心と心で人は触れ合うのだから。
満開のアプリコットの下で
みんなが散歩を楽しんでいるフンザの民。特にアプリコットの季節は、暖かく、のんびりとした雰囲気が色濃く現れる。幼い子どもたちも散歩を楽しんでいた。
フンザの人々と出会う散歩道
満開のアプリコットがあまりにも見事なため、足を止めて花の香りに包まれた。おじいさんも、おばあさんも、子どもたちも、お兄さんも、少女も通り過ぎていった。
あ、見たことのない人がいる!
石積みの上は畑が広がっている。農作業をしていた子どもたちが手を止め、振り返る。「あれは誰だろう?」。山の民との交流は、見つけてもらうことから始まる。
子どもたちの興味の対象に
畑の上の子どもたちと会話をしていたら、通りかかった子どもたちが集まってきた。「あなたたちはどこから来たの?」。日本人が数多く訪れるフンザだが、人々はとても素朴。
実りの秋を迎えるために
丁寧に、確実に、畑を耕す。春に畑を耕し、種を植え、高地性の麦などの植物を植える。特に秋は、麦が実り、黄金色に輝くという。
人の手が生み出した芸術作品
作業が終わった畑に、つい見とれてしまった。日本では機械工作がほとんどのため、このような手で作った広い畑を見ることなどほとんどない。人の手が生み出す形状は美しい。
低く走る雲が畑の上を走りゆく
農夫のお父さんがいた畑から2枚上の畑では、土たちが耕される時を今か今かと待っていた。インド洋からやってきた水蒸気が雲となり、フンザの山を駆け抜けてゆく。
大きな夕焼けのプレゼント
山から降りてくると、日没の時間がやってきた。オレンジ色、ピンク色、紫色、群青色と、空をキャンパスに色彩が入り乱れる。フンザの今日に感謝する時間。
山々に囲まれながら朝食を取る
泊まったホテルのテラスは、眼前に絶景が迫っていた。よし、今日の朝食はここで取ろう。すっかり仲良くなった旅人の友達を誘いに行くことが日課になっていた。
今日の散歩も王宮へ
かつてこの土地を収めた王族が住んでいたフンザの王宮。フンザの村を一望できる高台に建てられており、ほとんどの場所から王宮を見ることができる。
王宮という名の風格
きらびやかさはなく、他のフンザの住居と同じく、木の骨組みに土の壁。自然界から得た建材で建てられている。王は円形のリビングルームから村を眺めていたのだろうか。
月がフンザを眺めていた
王宮を散策していると、月の存在に気が付いた。白く輝く月は、イスラム教のシンボル、三日月の形。青空と木の色と、壁の色が融合してフンザならではの色あいとなっていた。
平らな生活道路を歩く
王宮を出て、近くの住宅街を散策してみた。フンザの町の個人住宅は、ほとんど斜面に建てられているため、通路が標高線に沿って据え付けられていた。
シルクロードの証
フンザを出る日、バス会社を訪れると「シルクロード輸送」という名の会社だった。そう、ここは太古の昔から私のような外国人の旅人を受け入れてきたシルクロードの中のひとつの点だったのだ。