アフガニスタンの標識や看板の特徴は、文字が多いことだ。この理由のひとつはおそらく、イスラム教の教えでは偶像崇拝が禁止されていることにあるのではないだろうか。タリバン時代は原始的なイスラム教への回帰が起こり、娯楽や偶像が厳しく禁止された。この影響で、特に絵や図などが減ったと思われる。その証拠に北部や中部に行けば、タジク人のリーダー「アフマド・シャー・マスード」や、ハザラ人のリーダー「アブドゥル・アリ・マザリ」などの肖像画を見かけるが、タリバンのリーダー「ムラー・ムハンマド・オマル」の肖像画は見たことがない。
幹線道路(ジャララバード〜カブール間)で発見した「工事中」のピクトグラム。国内で一体何枚必要なんだろう。図柄がモンペを履いているみたいでかわいい。
非常口の標識と思われるもの。個人的にとても好きだが、言葉が分からない人には何と書いてあるか分からない。(マザリシャリフ)
アフガニスタンでも、モスクなど威厳のある空間の中では携帯電話の使用はタブーとされている。(マザリシャリフ)
識字率の低さが問題とされているアフガニスタンで、英文字の標識を発見。住民の認知を図るためにはピクトグラムの導入が急務だ。(ジャララバード〜カブール間)
アフガニスタンの偉人ペイント
かつての勢力地域に行けば、内乱時代のリーダーたちの肖像画を見ることができる。北部では「アフマド・シャー・マスード」、中部では「アブドゥル・アリ・マザリ」をよく見かける。
アフガニスタンの商業用看板
この項目から、アフガニスタンの真のチカラを見ることになるでしょう。安全面などでいわく付きのアフガニスタンをあえて目次の先頭に持ってきているのは、ここから下(看板、ペイント、落書き)を見てほしいからです。ぜひ、見てください、笑ってください、よじれてください。すごいです。筆者も写真を撮る時に肩が揺れてたまりませんでした。
アフガニスタンの散髪屋の看板。あなたはこれを見てお店に入る勇気があるだろうか。(マザリシャリフ)
アフガニスタンの看板。何屋かまったく分かりません。入店するとこの絵のようになれるに違いない。なりたくない。(マザリシャリフ)
荒々しく逞しい山、豊かな緑、そしてコピー機!メーカーは「SONY A」というところらしく、絵から全天候型マシンと思われる。(ガズニ)
荒々しい山、豊かな緑、そして今日は嵐!今度のコピー機は高機能。速いです。横で大喜びするのは、金髪の…金髪の誰だこれ。(ガズニ)
何屋でしょーか?答えは「宿とレストラン」です。嵐に吹かれる椰子の木…。実はここのケバブ、おいしかったです。(ガズニ)
ちなみにカブール市街の商業ビルなどの看板は、変な図柄は少なく、おとなしめ。文字ばかりが目立つ。
さぁ、今日からあなたも体を鍛えてアフガニスタンマン(超人)になりませんか?アスレチックジムの看板。(カンダハル)
ま、またキサマか…。上のアフガニスタンマンとは別の場所で捕獲。ひょっとして流行ってる?(カンダハル)
えー、車はいかがっすかぁ?冷蔵庫いかがっすかぁ?テレビいかがっすかぁ?ちょっとしたヨドバシだな。(カンダハル)
はー、暑いしノド乾いちゃった。アイスクリーム売ってるんかな?と思ったらちゃいますやん!売ってるのは木?(カンダハル)
突っ込もうと思ったら、思ったよりもまともな品揃え。「WINDOWZ2003」がインストールされています。さぁ、買った買った。(カンダハル)
鍛えてムキムキに!そして、オリンピックに!ん?これはオリンピックなのだろうか。自慢げに看板を見るおっちゃんもgood!(カブール)
アフガニスタンのペイント
正反対のファンタジー。
左側のふたつについて:インドではリクシャー、タイではトゥクトゥクと呼ばれている小型のタクシーの背面です。左上の絵は馬に乗った男の人が剣で戦っています。山が見える湖の畔でしょうか、きれいな風景と争いという正反対を融合させています。左下の絵はもっと分かりやすいものです。こちらも諏訪湖の畔のような山と湖に戦闘が融合。なんと大航海時代さながらの帆船と、軍用ヘリが描かれています。時代を超える自由な発想に脱帽!
右側みっつについて:図案としては一般的な「自然と住宅」です。が…、山や木々、芝生、湖面はうまいのです。濃淡を使い分け丁寧に書いています。それに引き換え、住宅や車は突然小学生のような絵になってしまい、まったく立体的な構図が掴めていません。これこそが真のヘタウマです。
アフガニスタンの選挙ポスター
2004年の総選挙時の「みんなで選挙に行こう」「選挙にはIDカードを忘れずに」というポスターです。国連主導の選挙だったため、女性が男性と平等の権利を持ち、選挙に行きやすいように配慮がなされています。
時期か、タリバンの勢力圏の有無か、どちらかは分かりませんが、南部で特に見かけました。タリバンの旧勢力圏でない、カブール、バーミヤン、マザリシャリフを訪れたのは2004年4月上旬。これらの地域では、選挙ポスターを見かけることは少なく、2004年4月下旬のガズニ、カンダハルではたくさんのポスターと垂れ幕を見かけました。個人的な雑感ですが、カンダハルにはきれいな状態のポスターがとても少ないと思ったのは気のせいでしょうか。
選挙にはIDカードが必要ですというポスター。その前段階としてIDカードを登録・発行しましょう、という役割もありそうだ(カンダハル)
重要拠点を守る兵士とポスター。銃を持った人がいてもポスターが破れている。(カンダハル)
IDカードや女性の権利に関するポスター。女性はインターネットや読書、集会、勉強が許されるらしい。(ガズニ)
IDカードを忘れずに、という垂れ幕。街の至る所で見かけた(カンダハル)
アフガニスタンの落書き
人間の描きたいという本能。
まず左上、ホテルの一室で発見した落書きです。ご存知のとおり、イスラム教では結婚前の性交渉は御法度とされています。特にこの落書きがあった場所は、タリバン勢力圏のガズニ。通常よりも厳しい戒律があるため、男性の性欲は貯まりっぱなしです。その欲望を思わず書いてしまったのでしょう。見たこともない、ブルカの下の女性の素顔と体の特徴を正確に書けるわけはありません。結婚前の男性は、体位も動物から学んでいると思われます。
左下と右上は、よく見かける落書きのひとつ、銃です。特徴としては銃に模様が入っていること。真ん中は、その銃で蜂の巣になった看板です。まさか、この手描きの兵士をおとりに拠点を守ろうとはしていないと思いますが、敬礼しているのに撃つなんて…。
右下はチャイハネの目印でした。チャイハネはイスラムの喫茶店で、男性の社交場。真っ昼間から大の大人の男がのんびりとお茶を飲んでいます。日本の喫茶店のように、勉強したり、読書したり、ビジネスの話をしている人なんて一切ません。労働意欲ゼロの雰囲気は独特のものです。はっきり言って、落ち着きます。
(写真/左上&真ん中:ガズニ/左下&右上&右下:カンダハル)
取材地 |
アフガニスタン主要地域全域
|
---|---|
滞在都市 |
ペシャワール(カイバル峠)→ジャララバード→カブール→バーミヤン→バンデアミール湖→バーミヤン→ドゥシ→マザリシャリフ→バルフ→マザリシャリフ→サマンガーン→カブール→ガズニ→カンダハル→シンダッド→ヘラート→マシュハド(イラン)
|
移動方法 |
民間のタクシー
民間のハイエース
※ 公営交通機関がないので、住民と同じく民間交通機関を利用 |
アフガニスタンでは乗客が集まると決まった目的地へ出発するハイエースや、目的地方向へ向かう民間の車と交渉する民間タクシーが主な庶民の足だ。
訪問した街の写真コーナーにアフガニスタンの写真も掲載中。ぜひ、ご覧ください。